制度解説 2026-07-27 3分で読める

所有不動産記録証明制度で何が分かるか|相続登記漏れと用地取得の注意点

2026年2月開始の所有不動産記録証明制度を解説。請求できる人、費用、検索条件、抽出されない不動産と、相続調査・用地取得での使い方を整理。

制度解説

亡くなった人がどこに不動産を持っていたのか、相続人にも分からない。これまでは、心当たりのある市区町村の名寄帳や権利証、納税通知書などを手掛かりに探すほかなく、遠方の土地が相続登記されないまま残ることがありました。

2026年2月2日に始まった所有不動産記録証明制度は、この調査を大きく変えます。特定の人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を、登記官が検索し、一覧にして証明する制度です。

では、開発予定地の所有者を調べたい不動産会社も、この証明書を取ればよいのでしょうか。そこは違います。

誰の不動産でも検索できる制度ではない

証明書を請求できるのは、所有権の登記名義人と、その相続人その他の一般承継人です。委任を受けた代理人による請求もできます。

一方、土地を買いたい人、隣地所有者、不動産会社が、第三者の氏名から全国の所有不動産を自由に検索できる制度ではありません。登記事項証明書が不動産ごとに公開されていることと、人を起点に所有不動産を一覧化することは別だからです。

用地取得で使えるのは、たとえば相続人と連絡が取れ、その相続人自身が亡くなった登記名義人の不動産を確認する場面です。本人や相続人の協力が得られない案件で、取得希望者側が単独で請求することはできません。

過去の氏名と住所が検索結果を左右する

検索は、請求書に記載した氏名・名称と住所などの条件に基づいて行われます。登記名義人が転居を重ねている場合や、婚姻などで氏名が変わっている場合は、過去の氏名や住所も検索条件に加えることを検討します。その際は、戸籍の附票や住民票など、過去の表示を証明する資料が必要になることがあります。

検索条件が登記記録と合わなければ、本人所有の不動産でも抽出されない可能性があります。該当する不動産がないという証明が出ても、「その人には不動産が一つもない」と直ちに断定できるとは限りません。

証明書に出ない不動産がある

検索対象は、所有権の登記がされている不動産です。土地や建物の表示に関する登記だけがあり、所有権の登記がない不動産は対象になりません。コンピュータ化されていない登記簿の不動産や、検索時点で登記申請の審査中にある情報も、検索結果に含まれないことがあります。

相続登記が漏れている土地では、亡くなった人より前の名義が残っていることもあります。その場合、亡くなった人を検索しても、その土地は出てきません。証明書は強い手掛かりになりますが、戸籍、権利証、固定資産税の資料、過去の売買資料などが不要になるわけではありません。

費用は検索条件ごとにかかる

2026年7月時点の法務省案内では、手数料は検索条件1件・証明書1通ごとに計算されます。書面請求は1,600円、オンライン請求は郵送交付が1,500円、窓口交付が1,470円です。

過去の氏名や住所を複数の検索条件として指定すれば、その分だけ手数料が増えます。不動産が抽出されなかった場合も手数料は返還されません。費用を抑えるために条件を減らしすぎると見落としが生じ、条件を広げれば費用が増える。請求前に、戸籍や住民票から表記の変遷を整理する意味はここにあります。

相続調査と用地取得での使い方

相続人側では、被相続人名義の不動産を全国単位で確認し、相続登記の漏れを防ぐために使えます。遺産分割協議を始める前に一覧を取り、個々の不動産について登記事項証明書、公図、評価資料を確認する流れが考えられます。

用地取得側で効いてくるのは、証明書そのものより、誰が請求できるかという点です。相続人が見つかり、売買に向けた協議が始まっているなら、相続人に制度を説明し、対象地以外にも相続登記が必要な不動産がないか確認してもらう余地があります。相続人が分からない、または所在不明で協力を得られないなら、従来どおり所有者調査を進め、必要に応じて所有者不明土地管理人などの裁判所手続を検討します。

証明書が見つけるのは、検索条件と登記記録がつながった不動産です。開発区域の一筆を動かせるかどうかは、その後に相続関係、共有状態、相手方の意向、必要な処分を確認して初めて決まります。

請求できる人、必要書類、検索仕様、最新の手数料は、法務省「所有不動産記録証明制度について」で確認できます。相続登記義務化後も未了地が残る理由は、相続登記義務化後も、開発予定地に相続登記未了地が残る理由で説明しています。

この記事は一般的な解説で、個別の事案に対する法的助言ではありません。手続の選択、費用、期間は、対象地の登記、所有者調査の結果、事業の予定によって変わります。

晝間法律事務所所属 / 東京弁護士会

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