概要
登記簿上の名義人が既に死亡しているが相続登記がされていない、相続人が多数に及んでいてその一部の所在が分からない。こうした事情から所有者が特定できない土地は、管理も処分も事実上できないという問題がありました。
令和3年の民法改正により、利害関係人の申立てにより裁判所が管理人を選任し、その管理人が土地の保存・管理・処分を行える制度が創設されました(民法264条の2以下)。
従来は不在者財産管理人の選任(民法25条)を利用するのが一般的でしたが、不在者の財産全般を管理する制度であるため、特定の土地だけを対象とした処理が難しい面がありました。所有者不明土地管理人は、特定の土地に限定して管理人を選任できる点で実務的です。
利用場面
隣接地の取得
登記名義人が死亡し現在の所有者が不明
共有持分の問題
共有者の一部の所在が判明しない
再開発
対象区域内に所有者不明の土地がある
境界確定
隣地所有者が不明で境界確定が進まない
要件
申立てができるのは「利害関係人」です。隣接地の所有者、共有者、抵当権者、地方公共団体などが典型ですが、法律上の利害関係を有していれば広く認められます。
合理的な調査を尽くしても所有者を特定できないことの疎明が必要です。登記簿上の名義人の住所への郵便の送達結果、住民票や戸籍の調査結果、現地調査の報告などが資料となります。
手続き
- 1所有者の調査登記簿の確認、住民票・戸籍の取得、現地調査により所有者の特定を試みます。
- 2地方裁判所への申立て土地の所在地を管轄する地方裁判所に申立書を提出します。
- 3管理命令の発令・管理人の選任裁判所が審理し、管理命令を発令。弁護士・司法書士等が管理人に選任されます。
- 4管理人による管理・処分管理人が保存行為および性質を変えない範囲の利用・改良行為を行います。売却等の処分には裁判所の許可が必要です。
費用
申立て時には収入印紙と予納金が必要です。予納金は管理人の報酬等に充てるもので、30万円前後が目安です(事案により異なります)。業務完了後に剰余があれば返還されます。弁護士費用については、申立てにかかる事案の性質、手続に要する時間やコスト、取り扱う物件の価値などを踏まえ、個別にお見積もりいたします。
Q&A
所有者不明土地管理人は誰が選任されるのですか?
弁護士や司法書士など、事案に応じた第三者が選任されます。申立人自身が管理人になることはありません。
所有者が後から見つかった場合はどうなりますか?
管理人が所有者に財産を引き渡し、管理命令は取り消されます。管理人が行った適法な行為の効果は所有者に帰属します。
建物にも管理人を選任できますか?
所有者不明建物管理人の制度も同時に創設されています(民法264条の8)。土地と建物で所有者が異なる場合はそれぞれ申立てが必要です。