制度解説 2026-07-01 3分で読める

相続土地国庫帰属制度と所有者不明土地管理人の違い|開発・用地取得で混同しやすい点

相続土地国庫帰属制度と所有者不明土地管理人制度は、どちらも所有者不明土地問題と関係しますが、目的も申請主体も使う場面も異なります。開発・用地取得の現場での使い分けを整理します。

制度解説

相続土地国庫帰属制度と所有者不明土地管理人制度は、どちらも所有者不明土地問題と関係する制度です。そのため、開発予定地や事業用地取得の相談でも、「国に引き取ってもらう制度を使えばよいのではないか」「所有者不明土地管理人と何が違うのか」と聞かれることがあります。

しかし、両者は目的も、申請できる人も、解決できる問題も違います。特に開発・用地取得の現場では、相続土地国庫帰属制度を使えば用地問題が解決する、という発想では進みにくい場面が多くあります。

相続土地国庫帰属制度は、相続した人が土地を手放す制度

相続土地国庫帰属制度は、相続等によって土地を取得した人が、一定の要件を満たす土地について、法務大臣の承認を受けて国庫に帰属させる制度です。法務省の説明でも、相続等により土地を取得した人が土地を手放して国庫に帰属させることを可能にする制度として整理されています。制度の開始は令和5年4月27日です。

この制度の中心にいるのは、土地を相続した人です。相続した土地を管理し続けることが難しい、使う予定がない、将来の負担を減らしたいという場面で検討されます。

一方で、開発事業者や隣地所有者が、「この土地を取得したい」「境界確定をしたい」「事業区域内の一筆を処理したい」という理由で、他人の土地について国庫帰属を申し立てる制度ではありません。

所有者不明土地管理人は、利害関係人が裁判所に申し立てる制度

所有者不明土地管理人制度は、所有者を知ることができない、または所有者の所在を知ることができない土地について、地方裁判所が管理人を選任する制度です。利害関係人が申立てを行い、管理人が選任されると、管理人が対象土地の管理を行います。売却などの処分には、裁判所の許可が問題になります。

開発予定地で、登記名義人が古いまま相続人が追えない土地がある。共有者の一部と連絡が取れない。境界確認や売買の相手方がいない。こうした場面では、国庫帰属制度ではなく、所有者不明土地管理人や不在者財産管理人など、相手方不在を補う制度を検討することになります。

開発・用地取得では、国庫帰属ではなく「事業を進める相手方」が必要になる

開発・用地取得で困るのは、土地を誰かに手放してもらうこと自体ではありません。売買契約、境界確認、通行・掘削承諾、建物や動産の扱い、登記、決済など、事業を進めるための具体的な相手方が必要になることです。

相続土地国庫帰属制度は、相続人側が土地を国に帰属させる制度です。仮に土地が国庫に帰属したとしても、その後に事業者がどのように取得するかは別の問題になります。開発区域内の一筆を早期に処理したい場面では、事業工程に直接組み込める制度とは限りません。

所有者不明土地管理人制度では、管理人を相手方として、境界確認や売買に向けた手続を進められる可能性があります。もちろん、申立権者に当たるか、管理の必要性があるか、処分許可が得られるか、価格や利用計画に合理性があるかは、資料に基づいて検討する必要があります。

相続人が分かっている場合は、別の制度になることもある

相続土地国庫帰属制度と所有者不明土地管理人制度のどちらでもなく、不在者財産管理人や相続財産清算人を検討する場面もあります。

たとえば、相続人の一部は特定できているが、その人の所在が分からない場合には、不在者財産管理人が問題になります。相続人が存在するか明らかでない場合には、相続財産清算人が問題になります。対象が土地だけなのか、人の財産全体なのか、相続財産そのものなのかによって、制度選択は変わります。

制度名だけで決めるのではなく、登記名義人、相続関係、所在調査の結果、必要な手続、取得したい権利、事業工程を並べて考える必要があります。

初期調査で切り分ける

開発予定地や事業用地取得では、早い段階で次の点を確認します。登記名義人は誰か。名義人は生存しているか。相続が発生しているか。相続人は特定できるか。所在不明者は誰か。土地を取得したいのか、境界確認をしたいのか、承諾を得たいのか。事業上の期限はいつか。

相続土地国庫帰属制度は、相続した人が土地を手放すための制度です。所有者不明土地管理人制度は、相手方が分からない土地について、管理人を選任して手続を進めるための制度です。開発・用地取得で問題になるのは、多くの場合、後者に近い場面です。

所有者不明土地管理人選任申立開発予定地・再開発予定地の所有者不明土地対応では、制度の選択と事業工程への組み込み方を、資料に即して検討することになります。

弁護士 佐藤 佑亮
佐藤 佑亮
晝間法律事務所 / 東京弁護士会

ご相談について

記事に関連する案件・ご相談を承ります。