よくある場面
媒介を受けた売買案件で、隣地の登記を確認したら名義人が何十年も前に亡くなっていて、相続登記がされていない。あるいは媒介物件自体が共有で、共有者の一人と連絡がつかない。買主側からは早く境界を確定させてほしいと言われ、金融機関は確定測量図を求めてくる。仲介の現場でこうした行き止まりに当たった経験のある方は少なくないと思います。
この種の案件は、従来「動かせない物件」として整理されがちでしたが、令和5年に施行された所有者不明土地管理人の制度を使えば、相当の確度で売買まで持っていくことができます。
境界確定が止まっているケース
隣地の登記名義人が死亡しており相続人の所在が追えないため、確定測量図を作成できないという場面では、隣地について所有者不明土地管理人の選任を申し立てる方法があります。管理人が選任されれば、その管理人を相手方として境界確認を行うことができます。境界確認への立ち会いや確定測量図への承諾が管理人の通常権限に含まれるかは事案によりますが、疑義があれば裁判所に権限外行為の許可を求めて手続の安全性を確保します。
実際の事例として、遺産分割で取得した不動産の売却にあたり、隣地の所有者不明により境界確定が止まっていた案件で、本制度を利用して境界確認から売却完了まで進めた事例があります。
共有者の一部が不明なケース
媒介物件が共有で、共有者の一人の所在が判明しない。残りの共有者だけでは売却の意思決定ができない。こうした場面では、不明共有者の持分について管理人を選任し、残りの共有者と合わせて不動産全体の処分を進めるのが実務的です。共有持分だけを第三者に売却するルートもありますが、市場性の観点から管理人選任ルートのほうが結果的に出口が広いことが多いと思います。
仲介業者の立場でできること
申立てそのものは依頼者(売主・買主)が利害関係人として行うのが原則ですが、仲介業者の立場では、所有者調査の経緯整理、現地状況の写真・図面の準備、関係者へのヒアリングなどを整理しておくと、弁護士の介入後のスピードが大きく変わります。
また、媒介契約のスケジュール管理上、所有者不明問題の発覚時点で速やかに弁護士に橋渡しすることが、結果的に売買成立の確実性を上げます。問題の輪郭が見えた段階で一度ご相談いただければ、その案件で本制度が使えるかどうか、使う場合のスケジュール感、費用感をお伝えできます。