所有者は分かる。
それでも管理されない土地。
壊れた擁壁、ごみの放置、倒木のおそれ。所有者へ連絡できても、土地が管理されず周囲への被害が続くことがあります。管理不全土地管理命令は、所有者が不明かどうかではなく、管理の状態と権利侵害のおそれを見て、地方裁判所が管理人を選任する制度です。
管理が不十分なだけでは足りません
管理不全土地管理命令の要件は、申立人が利害関係人であること、所有者による土地の管理が不適当であることにより、他人の権利または法律上保護される利益が侵害され、または侵害されるおそれがあること、そして管理命令の必要があることです。土地上の建物にも管理命令が必要な場合は、建物についても別に申立ての対象とします。
大阪地方裁判所のQ&Aでは、破損した擁壁が隣地へ倒壊するおそれがある場合、ごみの放置により臭気や害虫の被害が生じている場合、建物の屋根や外壁が脱落・飛散するおそれがある場合が例示されています。現場の不快感だけでなく、誰のどの利益に、どのような被害が生じているか、または生じるおそれがあるかを具体化します。
所有者を探す制度ではなく、管理状態を改める制度です
所有者不明土地管理命令では、登記、戸籍、住民票などを調査しても所有者またはその所在を知ることができないことを示します。管理不全土地管理命令では、所有者の所在が分かっていても申立てが可能です。その代わり、所有者による管理が不適当であることと、周囲への権利侵害等を示す資料が中心になります。
所有者が対象地に居住し、管理人の行為を妨げることが予想されるなど、管理人を選任しても実効的な管理を期待できない場合は、申立てが認められないことがあります。所有者との交渉、妨害の可能性、行政上の対応、民事保全や訴訟など、ほかの手段との関係も見て制度を選びます。
所有者不明土地管理人との違いを確認する →現地写真と、所有者へ働きかけた経緯を残す
登記事項証明書、公図、位置図、固定資産評価証明書などで対象不動産と当事者の関係を確認します。その上で、現地の全景と危険箇所の写真、被害の発生状況、修繕・撤去等の見積り、自治体や消防・警察とのやり取り、所有者へ送った通知と回答を時系列で整理します。
擁壁なら亀裂や傾き、隣地との高低差、専門業者の所見が問題になります。ごみや草木なら、一時点の写真だけでなく、いつからどのような状態が続き、生活や土地利用にどう影響しているかを記録します。申立て後、裁判所から追加資料や調査を求められる場合もあります。
所有者の意見を聴いた上で、裁判所が判断します
申立先は、対象となる土地・建物の所在地を管轄する地方裁判所です。裁判所は提出資料から要件を審理し、原則として所有者の意見を聴きます。要件を満たすと判断した場合に管理命令を発令し、管理人を選任します。審問期日が開かれる場合もあります。
申立手数料、郵便切手のほか、管理費用と管理人報酬の原資となる予納金が必要です。予納金は予定される管理業務と期間を踏まえて裁判官が決めます。ごみの撤去、修繕その他の作業を予定する場合は、申立ての段階で見積りを求められることがあります。
よくある質問
手続と必要資料は、東京地方裁判所の手続案内と、大阪地方裁判所「管理不全土地・建物管理命令申立てについてのQ&A(令和8年4月版)」で確認できます。郵券や提出方法は裁判所により異なるため、申立先の最新案内を確認します。
土地の状態と、これまでの経緯から確認する
登記事項証明書、現地写真、所有者へ送った通知、行政とのやり取り、修繕や撤去の見積りがあれば、管理命令の要件とほかの手段を整理します。