事業者向け ・ 開発事業

用地内に
所有者不明区画があるとき

再開発・区画整理・宅地造成等で、対象区域に所有者不明の土地が含まれていて事業が止まっている方へ。用地買収のタイムラインに合わせた申立て設計を行います。

開発事業における所有者不明土地の処理
Photo by Tsuyoshi Kozu / Unsplash
対象
開発事業者
典型場面
用地買収・区画整理
解決策
管理人選任申立
根拠条文
民法 264条の2

よくある場面

対象区域の用地買収を進めていて、ほぼ全ての地権者と話がついている。ところが、一画だけ登記名義人がすでに死亡していて、戸籍を辿っても相続人の所在が追えない。あるいは相続人が多数に分かれ、その一部と連絡が取れない。事業全体は止まっているわけではないが、その一画のせいで全体計画が確定できず、着工・分譲・許認可の各局面で支障が出る——開発事業に関わる方であれば珍しくない場面だと思います。

従来この種の案件は、不在者財産管理人の選任(民法25条)か、最終的には収用手続を視野に入れて時間と費用を投下するか、対象地を回避して計画を縮小するかという選択肢しかありませんでした。

所有者不明土地管理人で動かす

令和5年4月に施行された所有者不明土地管理人制度は、こうした場面で検討できる手続です。利害関係人に当たり得る開発事業者が地方裁判所へ管理人選任を申し立て、選任後は管理人と用地取得の条件を協議します。管理人が土地を売却するには裁判所の許可が必要です。

不在者財産管理人が不在者の財産全般を管理するのに対し、所有者不明土地管理人の管理対象は裁判所が命令を出した土地です。どちらを使うかは、所有者や相続人をどこまで特定できているか、必要な処分が対象地だけで完結するかによって変わります。予納金や期間も、土地の状態、調査の内容、選任後に予定する業務によって決まります。

問題区画が見えた時点で着手する

売却まで予定する案件では、所有者調査の開始から半年〜1年程度を工程に入れることがあります。対象地の状態や裁判所での補充、管理人選任後の価格協議によっては、それ以上かかります。用地買収の初期に問題区画を把握し、他の地権者との交渉や許認可と並行できる作業を分けておく必要があります。

所有者調査を申立てに使える記録にする

申立てが認められるためには、合理的な調査を尽くしたことの疎明が必要です。登記名義人の住民票・戸籍除票の取得、相続人の追跡、現地調査、郵便送達の試行——こうした調査を計画的・記録的に行い、報告書として整える作業が申立ての基盤になります。調査が薄いと申立て自体が通らないことがあります。

対象地と事業計画の関係を示す

開発事業者が「利害関係人」に該当することは事案ごとの判断になります。具体的な事業計画書、開発予定区域の図面、対象地が事業に必要不可欠であることの説明、既に他の地権者と進めている取引の状況——こうした資料で、形式的な利害関係ではなく実質的な利害関係を示す必要があります。

管理人との協議を工程に入れる

管理人は裁判所が選任する第三者で、所有者の利益も保護する立場で行動します。価格交渉、引渡条件、許可申立てのタイミングなどは管理人と協議して進めることになるため、申立人側だけで全てが決められるわけではない点を理解しておく必要があります。

関連ケース・参考記事

よくある質問

開発区域内に所有者不明の区画があり、用地買収が進みません。どうすればよいですか
当該区画について所有者調査を行い、所有者不明土地管理人の要件を満たすか検討します。管理人が選任されれば用地取得の条件を協議できますが、売却には裁判所の許可が必要で、管理人が必ず申立人への売却に応じるわけではありません。
開発事業者は申立権者である「利害関係人」に該当しますか
対象地を含むエリアで具体的な事業計画を有していることが利害関係の根拠になりえます。事業計画書、用地取得の進捗、対象地の位置関係などを疎明資料として整える必要があります。事案によっては事前に弁護士と検討すべきです。
申立てから売却完了までどのくらいかかりますか
所有者調査、裁判所から求められる補充、公告、管理人選任後の価格協議と処分許可によって変わります。売却まで予定する案件では、全体で半年から1年程度を事業工程に入れることがあります。
管理人を申立人側で指名できますか
管理人は裁判所が選任する第三者で、申立人側から指名することはできません。所有者の利益も考慮して行動するため、申立人と管理人は対等な立場で協議します。

開発案件のご相談

事業計画の早い段階で論点を整理しておくほど、選択肢の幅は広がります。対象地一覧、区域図、登記情報、取得済み区画があれば、申立てを工程に入れられるかを検討します。