事業者向け ・ マンション建替え

所在不明の
区分所有者がいる案件

老朽化マンションの建替えや敷地売却で、区分所有者の一部が見つからない。2026年4月に施行された改正区分所有法により、裁判所の手続を経て、その人を決議の母数から除外する道ができました。もっとも、決議ができることと、所在不明者の専有部分を処理できることは別です。

マンション建替え 所有者不明区分所有者対応
Photo by Tsuyoshi Kozu / Unsplash
対象
建替え組合・管理組合
施行日
2026年4月1日
申立先
建物所在地の地方裁判所
典型場面
建替え・敷地売却決議

所在不明者が一人いるだけで、決議の計算が変わる

老朽化したマンションの建替えや敷地売却を進めるには、誰が区分所有者で、どれだけ議決権を持っているかを確定させなければなりません。相続登記がされないまま名義人が亡くなっている。登記上の住所へ通知しても戻ってくる。海外へ転居した後の連絡先が分からない。こうした住戸が残ると、決議に必要な賛成割合の計算そのものが難しくなります。

実務的に頻発する場面は、相続が発生したまま登記が放置されているケース、相続人が多数に分かれていて一部の所在が追えないケース、外国籍や海外居住の区分所有者で連絡が取れないケースなどです。築30年以上のマンションでは、こうした問題が複数の住戸にまたがることも珍しくありません。

2026年4月から、決議の母数から除外できるようになった

令和7年法律第47号による改正区分所有法は、2026年(令和8年)4月1日に施行されました。区分所有者を知ることができない、または所在を知ることができないときは、他の区分所有者や管理者などが地方裁判所へ申し立て、所在等不明区分所有者を集会決議の母数から除外する裁判を求められます(区分所有法38条の2)。

除外は管理組合の判断だけではできません。登記、戸籍、住民票など通常確認できる公的記録を調べ、専有部分の利用状況も確認したうえで、なお所在が分からないことを裁判所へ示します。裁判所の除外決定を得た後は、その区分所有者と議決権を母数に入れず、残る区分所有者で決議割合を計算できます。

ただし、除外決定は決議までの手続

ここは区別が必要です。除外決定によって建替え等の決議を成立させやすくなっても、所在不明者の専有部分が自動的に売却されたり、権利が消えたりするわけではありません。決議後にその専有部分をどう管理し、建替え事業の中でどう処理するかは、別の手続として検討します。

改正法では、所有者不明専有部分管理命令も新設されました(区分所有法46条の2以下)。利害関係人の申立てにより裁判所が管理人を選任し、その管理人が専有部分や敷地利用権などを管理します。処分には裁判所の許可が必要です。購入希望者も、専有部分を取得してより適切に管理しようとする具体的な関係があれば、利害関係人になり得ることが東京地方裁判所の案内でも示されています。

従来の不在者財産管理人や相続財産清算人が必要になる場面も残ります。所在不明者が生存しているのか、死亡して相続問題になっているのか。対象が専有部分なのか、敷地の共有持分なのか。決議を成立させたいのか、専有部分を管理・取得したいのか。目的と対象を確認してから手続を決めます。

調査は、決議の直前では遅い

建替え案件で所有者不明問題が判明した場合の進め方は、おおむね次のような順序になります。

まず、登記簿・住民票・戸籍の調査により、対象区分所有者の特定と所在確認を試みます。相続が発生している場合は、相続人の追跡を行います。この調査は、後の管理人選任申立てや改正法上の所在不明認定の前提になります。探したが見つからなかったという結論だけでは足りないので、いつ何を調べて何が分かったのかを、資料と対応させて残しながら進めます。

次に、調査結果に基づき、対応の枠組みを選定します。不在者財産管理人(民法25条)、相続財産清算人、改正区分所有法上の所在不明区分所有者の取扱い、敷地側で所有者不明土地管理人が関係する場面——どれを使うか、あるいは併用するかは、事案の性質、決議のタイミング、コスト、確実性のバランスで判断します。

選定した枠組みに沿って、申立てと決議準備を並行で進めます。除外決定を使う場合も、所有者不明専有部分管理命令を使う場合も、探索の記録が出発点です。決議の日程が決まってから調査を始めるのではなく、名簿と登記の不一致が見つかった時点で着手する方が、事業日程を組みやすくなります。

公的資料

制度の条文と申立書式は、法務省、e-Gov法令検索、東京地方裁判所の資料で確認できます。

関連ケース・参考記事

よくある質問

マンション建替えで所有者不明の区分所有者がいる場合はどうすればよいですか
2026年4月施行の改正区分所有法では、裁判所の除外決定を得て、所在等不明区分所有者とその議決権を集会決議の母数から除外できる制度が設けられました。ただし、決議後にその専有部分をどう管理・処分するかは別に検討が必要です。
令和7年改正区分所有法は、いつ施行されましたか
区分所有法に関する改正部分は、2026年(令和8年)4月1日に施行されました。所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する裁判や、所有者不明専有部分管理命令などが利用できるようになっています。
所有者不明専有部分管理命令とは何ですか
区分所有者またはその所在が分からない専有部分について、利害関係人の申立てにより地方裁判所が管理人を選任する制度です。区分所有法46条の2以下に定められ、専有部分だけでなく、その区分所有者の共用部分や敷地利用権に関する権利にも効力が及びます。
建替え組合の設立段階から弁護士に相談すべきタイミングは
区分所有者の所在確認の段階で、相続関係が不明な持分や所在不明者がいることが判明した時点が早期相談の起点です。決議手続に入ってから所有者不明問題に気づくと、スケジュールが大きくずれる可能性があります。

マンション建替えのご相談

所在不明者の調査、決議母数からの除外、専有部分の管理・処分は、それぞれ別の要件と手続があります。建替え決議の直前ではなく、区分所有者名簿と登記の確認を始めた段階で、どの手続が必要になるかを工程に入れておく必要があります。