所有者が分からない土地の問題
不動産の取引や管理の場面で、「隣の土地の所有者が誰か分からない」という問題に突き当たることがあります。登記簿を調べても名義人は何十年も前に亡くなっていて、相続登記がされていない。相続人を辿ろうにも、数世代を経て多数に及んでおり、その一部の所在が分からない。
こうした土地は全国に相当数存在するとされ、不動産事業の実務においても避けて通れない問題になっています。
令和3年の民法改正(令和5年4月1日施行)で、この問題に対処するための制度として「所有者不明土地管理人」が創設されました(民法264条の2以下)。
従来の制度との違い
所有者不明土地の問題に対しては、従来から不在者財産管理人の制度(民法25条)が利用されてきました。しかし、不在者財産管理人はその名の通り、不在者の財産「全般」を管理するための制度です。特定の土地だけを処理したい場合であっても、不在者の財産全体について管理人が選任されるため、手続が重くなるという問題がありました。
所有者不明土地管理人の制度は、特定の土地に限定して管理人を選任できる点で、実務的に使い勝手のよい仕組みになっています。申立ての対象が明確であり、管理人の業務も当該土地に限定されるため、手続が効率的に進みやすいという特徴があります。
実務で使われる場面
この制度の利用が想定される場面は、主に次の4つです。
ひとつは、隣接する土地の所有者が不明で境界確定ができないという場面。不動産の売却にあたって境界確定が必要だが、隣地の所有者が分からず手続が進められない。管理人が選任されれば、管理人を相手方として境界確定を進めることが可能になります。
もうひとつは、所有者不明の土地そのものを購入したいという場面。管理人は裁判所の許可を得て土地の売却を行うことができます。これにより、所有者不明であるがゆえに流通できなかった土地の取引が成立する道が開けます。
開発事業においても、対象区域内に所有者不明の区画があるために事業が進まないというケースで利用が見込まれます。
共有者の一部の所在が不明な場合にも、所在不明の共有者の持分について管理人を選任し、残りの共有者との間で全体の処分を進めるという対応が考えられます。
申立ての手続
申立てができるのは「利害関係人」です。隣地の所有者、共有者、地方公共団体、開発事業者などが該当しえます。申立先は、土地の所在地を管轄する地方裁判所です。
申立てにあたっては、所有者が不明であること、またはその所在が知れないことを疎明する資料が必要です。登記簿の調査、住民票や戸籍の取得、現地調査の報告書などにより、合理的な調査を尽くしても所有者を特定できなかったことを示します。
裁判所は審理の上、管理命令を発令し、管理人として弁護士や司法書士等を選任します。管理人は、保存行為および土地の性質を変えない範囲での利用・改良行為を行う権限を有します。売却等の処分行為には裁判所の個別の許可が必要です(民法264条の3第2項)。
まとめ
所有者不明土地管理人は、所有者が分からないために動かせなかった土地の問題を、実務的に解決するための制度です。施行から数年が経過し、裁判所の運用も徐々に固まりつつあります。
不動産事業のなかで所有者不明の土地に直面している方にとって、この制度は具体的な解決手段になりえます。