制度解説 2026-04-15 3分で読める

所有者不明土地管理人と不在者財産管理人の違い——どちらを使うべきか

不在者財産管理人(民法25条)と所有者不明土地管理人(民法264条の2)の使い分け。対象範囲・予納金・手続スピード・実務上の差異を整理。

制度解説

所有者不明土地が絡む案件で「不在者財産管理人」と「所有者不明土地管理人」のどちらを申し立てるべきか、という相談をよく受けます。両制度はいずれも所有者の代わりに財産を管理する第三者を裁判所が選任する仕組みですが、対象範囲・予納金・手続のスピードに明確な差があります。実務では、令和5年4月以降は所有者不明土地管理人を選択するメリットが大きい場面が増えています。

制度の概要

不在者財産管理人は、民法25条に基づき、従来から利用されてきた制度です。住所を去って容易に帰来する見込みのない者(不在者)の財産全般について、家庭裁判所が管理人を選任します。

所有者不明土地管理人は、令和3年改正民法(令和5年4月施行)で新設された制度です。所有者を知ることができない、または所在を知ることができない土地について、地方裁判所が管理人を選任します(民法264条の2)。

主要な違い

1. 対象の範囲

項目不在者財産管理人所有者不明土地管理人
対象不在者の財産全般特定の土地のみ
管轄家庭裁判所地方裁判所
根拠民法25条民法264条の2

特定の土地だけ動かしたい場面では所有者不明土地管理人が圧倒的に適しています。 不在者財産管理人を選任すると、不在者の預貯金・有価証券・他の不動産まで管理対象になり、管理人の業務負担も予納金も膨らみます。

2. 予納金の規模

不在者財産管理人は、財産全体を管理するという建付けから、予納金が30万〜100万円程度の幅で見込まれるのが一般的です(事案の規模・複雑さにより変動。多数の不動産・複雑な相続関係がある場合はさらに積み増しも)。

所有者不明土地管理人は、特定土地に限定される分、30万円前後が一つの目安とされます(事案により変動)。土地のみを対象とした処分目的であれば、コスト面で有利になりやすい構造です。

3. 申立要件

不在者財産管理人は「不在」が要件です。所在は不明だが「不在者である」ことの主張・疎明が必要になります。

所有者不明土地管理人は、所有者を知ることができない、または所在を知ることができないことが要件です。「不在」概念に縛られず、相続関係が複雑で現在の所有者が特定できないケースなど、より広く活用できます。相続登記未了で名義人が死亡している土地は典型的な対象です。

4. 処分のしやすさ

不在者財産管理人による不動産処分には、家庭裁判所の権限外行為許可(民法28条)が必要です。手続自体は確立されていますが、許可審査の観点が「不在者の利益保護」中心になります。

所有者不明土地管理人も処分には裁判所の許可が必要ですが、制度の趣旨が「所有者不明土地の活用」にあるため、許可判断において処分の実現可能性が現実的に検討されやすい構造です。

どちらを選ぶか——実務上の判断

所有者不明土地管理人を選ぶべき場面

  • 特定の土地だけを処分・取得・境界確定したい
  • 登記名義人が死亡しており相続人が特定できない(相続登記未了)
  • 予納金を抑えたい
  • 申立人が不動産事業者・開発事業者・自治体・隣地所有者

不在者財産管理人を検討する場面

  • 対象者の財産全体について管理が必要(生死不明者の財産保全等)
  • 土地以外の財産(預貯金・建物・他不動産)も同時に管理が必要
  • 古い案件で、所有者不明土地管理人制度の施行前に既に手続が進んでいる

併用・選択替えも可能

施行前から不在者財産管理人で進めていた案件について、所有者不明土地管理人の選任に切り替える選択もありえます。費用負担と手続効率を比較して、現在の案件設計が最適か再検討する価値があります。

まとめ

令和5年4月以降、特定土地が絡む案件は、まず所有者不明土地管理人の活用を検討するのが実務的な出発点です。対象を絞れる分、予納金・期間・許可判断のいずれの面でも有利に働きます。

ただし、対象者の財産全体に管理ニーズがある場合や、相続関係の整理を含めて広く対応すべき場合は、引き続き不在者財産管理人が適しています。事案ごとに、目的・対象範囲・コストを軸に選択することが必要です。

関連記事:

弁護士 佐藤 佑亮
佐藤 佑亮
晝間法律事務所 / 東京弁護士会

ご相談について

記事に関連する案件・ご相談を承ります。