事業者向け 2026-03-07 更新 2026-07-27 4分で読める

開発予定地に所有者不明の一筆がある場合|用地取得の進め方

再開発、宅地造成、区画整理の予定地に所有者不明の一筆が残った場合に、所有者調査、利害関係、管理人選任、処分許可を事業工程へ組み込む考え方を解説。

事業者向け

開発予定地の大部分について用地交渉が進んでいても、一筆の名義が古いまま残ることがあります。登記名義人はすでに亡くなっているが相続登記がない。相続人を追うと数世代に分かれ、一部の所在が分からない。共有持分の一つだけ交渉相手が見つからない。面積が小さくても、その土地が接道や排水、工事動線に必要なら、事業全体への影響は小さくありません。

所有者不明土地管理人は、こうした案件で検討する制度の一つです。ただし、対象地を取得するための自動的な手続ではありません。誰の権利が分からないのか、どの土地または持分を管理対象にするのか、申立人にどのような利害があるのかを、事業計画と権利調査の両面から示す必要があります。

事業区域が固まる前から調査できること

用地リストに登記名義、受付年月日、共有者数、抵当権などの負担、建物登記の有無を入れ、現況図と重ねます。名義が古い土地は、住民票や戸籍を辿り、現在の所有者と所在を確認します。現地に建物や利用者がいる場合には、登記上の権利関係と占有関係を分けて見ます。

この調査は、管理人選任を申し立てるかどうかにかかわらず必要です。相続人全員が判明すれば通常の用地交渉に戻れることがありますし、所有者は特定できるが所在不明なら不在者財産管理人が適することもあります。相続人の有無が明らかでない場合や、不明共有者の持分だけが残る場合には、さらに別の制度との比較が必要です。

土地取得前の権利調査の記事では、契約前に拾っておきたい資料と確認事項をまとめています。

利害関係は、事業計画の具体性から説明する

所有者不明土地管理命令の申立人は利害関係人でなければなりません。民間の購入希望者でも利害関係人に当たり得ますが、購入したいという意思だけで足りるとは限りません。

対象地を含む区域図、取得済みまたは交渉中の土地、予定する建物や道路、対象地を取得できない場合に止まる工程などを示し、なぜ管理人による管理や処分が必要なのかを説明します。計画が初期段階にある場合は、どこまで具体化すれば申立ての根拠になるかを先に検討します。

管理人が選任された後も、売却には裁判所の許可が必要です。管理人は不明所有者の利益を踏まえて条件を判断し、裁判所は価格資料などを確認します。申立人が予定した価格や時期で必ず取得できるわけではないため、工程表には処分許可と価格調整の時間を残します。

土地と建物、共有持分を分けて見る

土地上に所有者不明の建物がある場合、土地の管理命令だけで建物を処分できるとは限りません。土地と建物の登記名義、管理の必要性、取得後に予定する解体や利用を確認し、建物についても管理命令が必要かを検討します。

共有地では、不明共有者の持分について管理人を選任する方法のほか、令和3年改正民法で設けられた不明共有者に関する手続が問題になることがあります。不動産全体を取得したいのか、利用や管理の決定をしたいのかで選択肢が変わります。開発予定地で共有者の一人が不明な場合の記事でも整理しています。

公共的な利用制度とは目的が違う

所有者不明土地法の地域福利増進事業は、一定の所有者不明土地について、都道府県知事の裁定により使用権を設定し、公園、広場、購買施設など地域のための事業に利用する制度です。土地の所有権を取得して民間開発を行う手続とは、目的も要件も異なります。

道路や公共施設の整備では、土地収用法や所有者不明土地法の特例が候補になることもあります。自治体、区画整理、再開発の案件では、事業法上の手続と民法上の管理人制度を並べ、どの場面で交渉相手や財産管理の主体が必要になるのかを確認します。

制度の資料は、国土交通省の所有者不明土地法の案内で確認できます。

工程に入れるのは「申立てまで」ではない

所有者調査の後、申立書と探索報告書を作成し、裁判所の審理と公告を経て管理命令が発令されます。取得まで進めるなら、その後に価格資料の準備、管理人との条件協議、裁判所の処分許可、契約、決済、登記が続きます。

日野市が公表している空き家の事例では、令和5年6月の申立てから同年10月の管理人選任、令和6年3月の売却まで約9か月を要しています。これは自治体による土地・建物の一事例で、民間の開発案件にも同じ期間が当てはまるわけではありません。ただ、管理人が選任された時点が終点ではないことは分かります。経過は日野市の続報で確認できます。

対象地が工程上どの程度重要か、売買以外の解決でも足りるか、複数筆をどの順に処理するかを先に決めると、申立ての目的と必要資料が明確になります。

この記事は一般的な解説で、個別の事案に対する法的助言ではありません。手続の選択、費用、期間は、対象地の登記、所有者調査の結果、事業の予定によって変わります。

晝間法律事務所所属 / 東京弁護士会

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