事業者向け 2026-01-24 更新 2026-07-27 3分で読める

隣地所有者が不明で境界確認が進まないとき|調査と管理人選任

隣地所有者が分からず境界確認や確定測量が進まない場合の対処法。登記・相続人調査、法務局の運用、筆界特定、所有者不明土地管理人をどう選ぶかを実務に沿って解説。

事業者向け

売却する土地の測量を始めたところ、隣地の登記名義人が亡くなっていた。相続登記はされておらず、誰に境界確認を求めればよいか分からない。買主との話は進んでいるのに、確定測量だけが残る。

ここで「隣地所有者の印鑑がなければ、もう売れない」と決めるのは早いと思います。一方で、所有者不明土地管理人を申し立てれば必ず片付く、というものでもありません。必要なのが何のための境界確認なのかによって、選ぶ手続が変わります。

まず、何が止まっているのかを確認する

分筆や地積更正の登記をするために筆界を明らかにしたいのか。売買契約上、買主から隣地所有者との境界確認書を求められているのか。通行、越境、掘削などについて承諾も必要なのか。同じ「境界が確定できない」という相談でも、必要な行為は同じではありません。

法務省は、隣地所有者が不明で筆界確認情報を得られない場合について、法務局の保管資料や現地調査等を踏まえて登記官が筆界を認定する運用を示しています。土地家屋調査士と資料を確認した結果、隣地所有者との確認書がなくても分筆や地積更正の登記を検討できる場合があります。

筆界そのものに争いがある場合には、法務局の筆界特定制度も候補になります。ただし、筆界特定で明らかになるのは公法上の筆界です。所有権の範囲をめぐる争いや、通行・越境・掘削についての合意まで一度に解決する制度ではありません。

連絡できる所有者や相続人が本当にいないか

管理人選任を検討する前に、登記事項証明書から名義人の住所と登記原因を確認します。名義人が亡くなっていれば戸籍を追い、相続人とその所在を調べます。登記上の住所に郵便が届かなかったというだけでは、所有者を知ることができない、または所在を知ることができないと直ちに説明できるわけではありません。

文書だけで調査が終わらないこともあります。私が扱った案件では、住民票、戸籍、戸籍の附票に加え、現地確認、近隣関係者からの聞き取り、関係先への訪問を行い、土地家屋調査士と一緒に調査経過を資料にしました。どこまで調べても相手方を特定できなかったのか。その過程自体が、裁判所へ提出する疎明資料になります。

調査の途中で相続人が見つかれば、管理人選任ではなく、その人との境界確認へ戻ります。相続人が複数いる場合には、誰の関与が必要かを測量や予定する登記の内容と合わせて検討します。

管理人を相手に境界確認を進める場合

通常の調査をしても所有者またはその所在が分からず、隣地について管理の必要がある場合は、所有者不明土地管理人の選任申立てを検討します。隣地所有者は、自分の土地の売却や利用のために境界確認が必要であれば、対象地との具体的な利害関係を説明できます。

裁判所が管理命令を出すと、選任された管理人を相手に測量や境界確認について協議できるようになります。ただし、管理人が当然にあらゆる承諾をできるわけではありません。境界確認書への署名、通行・掘削の承諾など、予定する行為の内容によっては、管理人から裁判所へ権限外行為の許可を求める必要があります。

実際に扱った案件でも、管理人選任後、境界確認と通行・掘削に関する承諾について裁判所の許可を得て進めました。確認が終わった後は、管理命令の取消しと管理人の報酬決定を経て手続を終了しています。詳しい経過は、隣地が所有者不明で売却が止まった事例にまとめています。

費用と日程は、必要な行為から逆算する

申立てには、裁判所へ納める手数料、郵便料、登録免許税、管理人の報酬や活動費用に充てる予納金が必要です。予納金は一律ではなく、管理人に予定する業務と管理期間を踏まえて裁判官が決めます。境界確認だけなのか、草木の処理や売却まで予定するのかで同じ金額にはなりません。

日程も、相続関係の調査、現地調査、裁判所から求められる資料の補充、公告、管理人選任後の測量と許可申立てによって変わります。売買契約を結んでから問題に気づくと、予定した決済日に間に合わないことがあります。登記事項証明書、公図、測量図、現地写真、土地家屋調査士から指摘された内容があれば、売却条件を固める前に手続の要否を確認した方がよい場面です。

所有者不明土地管理人の申立要件と裁判所費用は、所有者不明土地管理人選任申立の解説で説明しています。

参考資料

この記事は一般的な解説で、個別の事案に対する法的助言ではありません。手続の選択、費用、期間は、対象地の登記、所有者調査の結果、事業の予定によって変わります。

晝間法律事務所所属 / 東京弁護士会

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