隣地所有者が不明で境界確定ができない場合の対処法|所有者不明土地管理人の活用

2026-01-24

境界確定が止まる、という問題

不動産の売却にあたって、隣地との境界確定が必要になることは多い。買主側が求めることもあれば、金融機関の融資条件として必要とされることもある。いずれにしても、境界確定には隣地所有者の立ち会いと合意が不可欠です。

ところが、隣地の登記を調べてみたら名義人が何十年も前に亡くなっていて、相続登記がされていない。戸籍を辿っても相続人が多数に分かれていて、全員の所在を追いきれない。こうなると、境界確定の手続は完全にストップする。売却予定の不動産を抱えたまま、ただ時間だけが過ぎていく。

不動産業者の方であれば、こうした案件を経験されたことがあるかもしれません。

所有者不明土地管理人による解決

令和5年4月に施行された所有者不明土地管理人の制度(民法264条の2)を使えば、この膠着状態を打開できます

仕組みはこうです。隣地について「所有者が不明であること」を裁判所に疎明した上で、管理人の選任を申し立てる。裁判所が管理命令を発令すると、弁護士等が管理人に選任される。以後、境界確定はその管理人を相手方として進めることができます。管理人は当該土地の保存行為として境界確定に応じる権限を有しているため、手続に法的な瑕疵はありません。

境界確定が完了し、目的を達成した後は、管理命令の取消しを裁判所に申し立てて手続を終了させます。

実務上のポイント

この手続を利用する場合、いくつかの点を押さえておく必要があります。

所有者調査の程度。申立てにあたっては、合理的な調査を尽くしたことの疎明が求められます。登記名義人の住民票・戸籍の取得、相続人の追跡、現地調査といった作業を計画的に進める必要がある。調査の方法や範囲については裁判所の運用もあるため、早い段階で弁護士に相談するのが効率的です。

予納金。管理人の報酬等に充てるための予納金を申立て時に納付する必要があります。金額は事案により異なりますが、一定の費用を見込んでおくべきです。業務完了後に剰余があれば返還されます。

スケジュール。申立てから管理人の選任までには数か月程度を要するのが一般的です。不動産の売却スケジュールとの兼ね合いを考えると、問題が判明した時点で早めに動き始めることが重要です。後から急いで申し立てても、売却の時期に間に合わないことがあります。

従来の方法との違い

この制度ができる前は、不在者財産管理人(民法25条)の利用が検討されていました。しかし、不在者財産管理人は不在者の財産「全般」を管理する制度であるため、特定の土地の境界確定だけが目的の場合には、手続が重い面がありました。

所有者不明土地管理人は、特定の土地に限定して管理人を選任できる制度です。対象が明確であり、管理人の業務範囲も限定されるため、境界確定のような特定の目的には使い勝手がよい仕組みになっています。

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