事例 2026-04-08 更新 2026-07-27 2分で読める

日野市の所有者不明空き家事例|申立てから売却・予納金返還まで

日野市が所有者不明土地・建物管理命令を申し立て、管理人選任、売却、建物解体、予納金返還まで進めた公表事例を、市の資料に沿って紹介。

事例

東京都日野市は、長期間管理されていなかった空き家について、所有者不明土地・建物管理命令を東京地方裁判所立川支部へ申し立てました。日野市の公表によれば、都内自治体による初の申立事例です。

令和5年6月の申立てから、管理人の選任、第三者への売却、建物の解体と新築、予納金の返還までの経過が公表されています。制度が実際にどう進んだかを確認できる一例ですが、この期間や結果が他の案件にもそのまま当てはまるわけではありません。

市が公表した経過

日野市の続報では、令和5年6月13日に管理命令を申し立て、同年10月27日に弁護士が管理人に選任されたとされています。令和6年3月8日に新たな所有者への売却が完了し、新所有者が既存建物を解体したうえで住宅を新築しました。

その後、令和6年12月2日に市へ予納金が返還され、一連の手続が終了しています。申立てから売却までは約9か月ですが、予納金返還を含む手続全体では約1年半です。「9か月で全部終わった事例」と読むと、実際の経過とはずれます。

対象は土地1筆、約66平方メートルと建物1棟でした。市は、所有者を特定できず、管理されない状態が周辺の住環境に影響していたことから、土地と建物について管理命令を申し立てています。

土地だけでなく建物も対象にした

空き家の案件では、土地の所有者が分からないというだけでは建物を処分できません。土地と建物は別の不動産であり、所有者不明土地管理命令の効力が建物へ当然に及ぶわけではないからです。

日野市の事例では、土地と建物の双方について管理命令が申し立てられました。空き家の売却や解体まで予定する案件では、土地と建物の登記、所有者、管理の必要性をそれぞれ確認する必要があることが分かります。

予納金は「全額戻る」とは限らない

市の続報には予納金が返還されたとあります。ただし、返還額や当初の予納額は同ページの本文からは分かりません。一般に、予納金は管理人の報酬や管理費用に充てられ、残額があれば返還されます。

したがって、この事例から「空き家案件では予納金が全額返る」「予算の不確実性がなくなる」とまではいえません。予定される管理事務、建物の状態、残置物、売却までの期間によって必要額は変わります。

民間の購入希望者とは申立ての根拠が違う

この事例の申立人は自治体です。所有者不明土地法42条は、国の行政機関の長や地方公共団体の長に、一定の場合の管理命令申立権を認めています。民間の不動産会社や購入希望者が申し立てる場合は、民法264条の2にいう利害関係人に当たることを、具体的な購入計画や対象地との関係から示す必要があります。

管理人選任後に売却を予定する点は共通していても、申立権の根拠と疎明資料は同じではありません。民間案件へこの事例を当てはめるときは、対象地が事業計画のどこに位置し、取得できないことで何が止まるのかを別途整理します。

日野市の公表資料は、申立て時の第1報と、売却・予納金返還後の続報で確認できます。

この記事は一般的な解説で、個別の事案に対する法的助言ではありません。手続の選択、費用、期間は、対象地の登記、所有者調査の結果、事業の予定によって変わります。

晝間法律事務所所属 / 東京弁護士会

ご相談について

記事に関連する案件・ご相談を承ります。