開発事業で所有者不明土地がある場合の対処法|管理人選任による解決
再開発・区画整理・宅地造成の対象区域内に所有者不明の土地がある場合、所有者不明土地管理人を選任して事業を前に進める方法。所有者不明土地利用円滑化法との使い分けも整理。
東京都日野市が、長期間放置されていた空き家について所有者不明土地管理人制度を活用し、都内自治体として初めて売却まで完了させた事例。申立てから売却完了まで約9か月。
東京都日野市は、所有者不明土地管理人制度を自治体として活用した東京都内初の事例として知られています。長期間放置されていた空き家について、市が地方裁判所に管理命令を申し立て、選任された管理人を通じて売却に至りました。本制度の自治体活用例として参考になる事案です。
対象は日野市内に所在する空き家でした。長期間にわたり管理されない状態が続いており、近隣の住環境への影響が懸念されていました。所有者は登記簿上の名義人が既に死亡しており、相続関係から現在の所有者を特定することができませんでした。
従来であれば、こうした事案は不在者財産管理人(民法25条)の選任を検討するか、空家等対策特別措置法に基づく特定空家としての対応にとどまっていた領域です。本件では、令和3年改正民法で創設された所有者不明土地管理人制度(民法264条の2)を活用したことが特徴です。
時系列は以下のとおりです。
申立てから売却完了まで約9か月で進行しました。新所有者は建物を解体・新築し、近隣の住環境が改善されています。予納金は管理人の業務完了後に剰余分として返還されています。
民法264条の2は、申立権者を「利害関係人」と規定しています。地方公共団体が空き家対策・住環境保全の観点から利害関係を主張して申し立てることが可能であることを、本件は実例として示しました。
特定空家として行政指導を経ても所有者が判明せず手詰まりになっていた事案について、本制度が選択肢に加わる意義は大きいといえます。
申立てから売却完了まで約9か月という期間は、不動産の処分手続として現実的な範囲です。不在者財産管理人を経由する場合と比較しても、対象を特定土地に限定できる分、手続の効率性が高いことが裏付けられています。
本件では予納金が返還されています。管理人の業務完了時に剰余があれば返還されるという制度設計は、自治体予算の観点からも重要です。空き家対策に投入する予算の不確実性が抑えられます。
日野市事例は自治体の活用ですが、「申立権者は利害関係人である」という点で、開発事業者・不動産事業者にとっても同じ枠組みが使えます。
開発予定地に所有者不明地があるケース、隣接地が長期放置で売却に支障が出ているケース、再開発区域内で所有者特定が困難なケース等、本制度が機能する場面は広く存在します。日野市事例で示された「申立て→管理人選任→処分→管理命令取消し」の流れは、業者案件でもそのまま当てはまります。
実際の申立てにあたっては、所有者調査の範囲、利害関係の主張内容、予納金の見積もり、管理人選任後の協議の進め方など、事案ごとに検討すべき点が多くあります。
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