相続登記義務化後も、開発予定地に相続登記未了地が残る理由
令和6年4月に相続登記が義務化された後も、開発予定地・事業用地取得で相続登記未了地が残る理由。過去の未登記、相続人多数、所在不明者、管理人制度の検討場面を整理。
再開発・宅地造成・事業用地取得で、登記名義人が死亡したまま相続登記未了の土地が残った場合の調査、利害関係人性、所有者不明土地管理人・不在者財産管理人の使い分けを整理。
開発予定地の用地買収では、ほとんどの地権者との協議が進んだ後に、登記名義人が古いままの土地が残ることがあります。登記簿上の所有者は何十年も前に亡くなっている。相続登記はされていない。戸籍を辿ると相続人は多数に分かれており、その一部について住所や生死の確認が難しい。こうした土地が一筆残るだけで、区域全体の取得、許認可、造成、決済の工程に影響します。
この場面で重要なのは、「相続登記をしてください」と言うだけでは解決しないことです。相続人全員が判明し、連絡が取れ、協議に応じるのであれば相続登記と売買で進められます。しかし、一部の相続人の所在が追えない、そもそも相続人の範囲を確定できない、協議の相手方が実質的に不在であるという場合には、裁判所を使った管理人制度を検討することになります。
最初に見るべき資料は、対象地一覧、公図、登記事項証明書、地積測量図、取得済み区画と未取得区画の整理表です。相続登記未了地については、登記名義人の戸籍、住民票除票、戸籍の附票、相続人調査の経緯も必要になります。
開発事業者側では、法務部門や用地担当者が独自に調査を進めていることがあります。その場合、調査メモをそのまま使うのではなく、裁判所に提出できる形に整理し直す必要があります。いつ、どの役所に、誰について、どの資料を請求し、何が分かったのか。郵便を送った場合は、送付先、送付日、返戻の有無も記録しておくべきです。
管理人選任申立てでは、「所有者を知ることができない」又は「その所在を知ることができない」ことを資料で示します。単に「連絡が取れない」と書くだけでは足りず、合理的な調査を尽くしたことが分かる資料が必要です。
所有者不明土地管理人は、特定の土地について裁判所が管理人を選任する制度です。管理人が選任されると、その管理人が土地の管理を行い、裁判所の許可を得て売却などの処分を行うことができます。
用地買収の場面では、開発事業者が申立人になれるかが問題になります。ポイントは、単なる購入希望ではなく、対象地を取得する具体的な必要性があるかどうかです。対象地が事業区域に含まれていること、他の区画の取得が進んでいること、事業計画上その土地が必要であること、取得できない場合に事業工程へ具体的な支障が出ることを資料で示します。
この点は、漠然と「買いたい」と説明するのではなく、区域図、事業計画書、取得状況一覧、既に締結済み又は交渉中の契約、許認可や決済の予定を組み合わせて説明することになります。
相続登記未了地で相続人の一部が所在不明の場合、不在者財産管理人を検討することもあります。不在者財産管理人は、不在者の財産全般を管理する制度です。対象者が特定できており、その人の所在が分からない場合には有力な選択肢になります。
一方、所有者不明土地管理人は、特定の土地に着目する制度です。相続人が多数に分かれており、全員の所在を追うことが難しい場合や、事業上問題になっている土地を限定して処理したい場合には、所有者不明土地管理人の方が事業工程に組み込みやすいことがあります。
どちらを使うべきかは、所在不明者が誰なのか特定できているか、問題が当該土地に限られるか、売買・処分まで進める必要があるか、予納金と期間をどう見込むかによって変わります。
管理人選任の申立ては、用地取得の最後に慌てて着手する手続ではありません。申立て準備、裁判所の審理、管理人選任、管理人との協議、価格資料の準備、処分許可、売買・登記までを考えると、半年から1年程度を見ておく必要があります。
そのため、相続登記未了地が見つかった段階で、対象地の重要性と工程上の影響を評価することが大切です。対象地が事業に不可欠であるなら、他の地権者交渉と並行して管理人制度の準備を進める方が、結果としてスケジュールを守りやすくなります。
用地買収の案件では、法的手続だけを切り出して考えるのではなく、事業計画と一体で検討する必要があります。
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